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Educational program for preservation in the Netherlands

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Academic year: 2021

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-97- ・大田省一 最初は、Authenticity に関して素材に関する議論に集中しておりまして、もう少し広げる 必要があるかなと思いましたが、デザインにおける Authenticity、これは後藤先生にご提 示していただいたのですが、モダニズム建築ならではの作家性が前面に出るのではないか と、「美化された過去」という非常に興味深い話が出てきました。これに関しましては、や はりoral history の問題として、一般的な歴史学としてでもよく問題点として検証されると 思います。 ◆第2 部 建築リソースマネジメントと教育 趣旨説明:中川理 前半には、大変重要な論点をいくつか挙げ ていただいたと思います。その話は後半の教 育の話にも当然つながる事を含んでいたの ではないかと思います。後半は教育の話にな ります。本学には建築史の先生方がたくさん いらっしゃいます。大変珍しい例ですが、同 時に建築の保存や修復を専門にする大学や そういうプログラムを持っている大学も、日 本では、全くないわけではありませんが珍し いことです。今からお話しいただきますように、欧米ではこのプログラムは珍しいもので はありません。なぜ日本ではこういうプログラムが普及していないのかといいますと、基 本的にまだ「建築をどうすれば保存できるか」という段階にある、つまり前半の話の中で 「建築をどう残すのか」という方法についての色々な議論がありましたが、日本の場合は それに行きつく前の「どうやったら建築が保存できるか」という議論で終わっている段階 にあるのだろうと思います。 ただ、後藤先生の話の中にもありましたように、1996 年に登録文化財制度ができてから 大分状況が変わってきている事を私も実感しております。色々な建築が登録され、年 500 件ずつ増えております。ところがそれを具体的に保存する事業を興す、あるいはその保存 事業をマネジメントする人材がなかなかいない、元々そうした職能が確立していないとい う状況があります。そこで現在本大学でそのプログラムを試みているところであります。 ですので、後半はそうした建築の保存修復に関わる専門家をどうやって育てればいいの か、というところに論点をおいて話を進めたいと思います。まずそうした実践としてオラ <写真 36>中川理

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-98- ンダの例を紹介していただきたいと思います。このシンポジウム自体の企画の中心となっ ていただいた笠原先生から、まずご紹介をお願いいたします。 ・笠原一人 京都工芸繊維大学の笠原と申します。私は近代建築史を専門としていますが、昨年度 1 年間、オランダのデルフト工科大学 RMIT 学科に客員研究員として滞在し、教育の様子、 保存修復の様子、先ほどのリートフェルトのソンスビーク・パビリオンの問題をタイムリ ーに議論しているところを見聞きすることができました。その時にマリー=テレーズ・フ ァン・トール先生とヒルキー・ゼイルストラ先生のお二人にお世話になりました。 今からヒルキー・ゼイルストラ先生にデルフト工科大学 RMIT 学科での教育の様子をご 紹介いただきます。ヒルキー・ゼイルストラ先生は大学を出られた後、建築家の事務所に 15 年程お勤めになり、その後博士号を取得され、今は教員として活躍されています。また DOCOMOMO Nederland(ドコモモ・オランダ支部)の前の前の事務局長としても活躍さ れました。 ファン・トール先生がどちらかというと歴史家の立場であったのに対し、ゼイルストラ 先生は建築家の視点から保存修復あるいは改修を調査・研究・実践していらっしゃる方で す。特にデルフト工科大学 RMIT 学科の教育部門のチーフも務めていらっしゃいます。フ ァン・トール先生は研究部門のチーフを務めていらっしゃいます。教育部門と研究部門は 分かれています。 RMIT 学科の教育プログラムは非常に充実しております。私も行って非常に驚きました。 日本あるいはヨーロッパでも、建物を文化財として認識して保存しようという学科はたく さんあるかと思いますが、RMIT 学科の特徴は、保存だけでなくいかに再利用していくか、 改修して使っていくか、ということが大きなテーマとなっていることです。保存はその中 の一つの要素になります。 先ほどインターベンション、モディフィケーション、トランスフォーメーションという 言葉が出てきましたが、いずれも変形とか手を加えるとか介入とかそういった意味でして、 保存も手を加える、改修も同じく手を加えることと捉えられています。「保存」すなわち「も とに戻すこと」にこだわるのではなく、改修も保存も合わせて古い建物に手を加えること 全部を扱う、そういう学科です。ですので、日本語に訳しにくい学科であります。強いて 言えば、「建築保存・改修学科」でしょうか。日本にはない、非常にユニークな新しい教育 をされていると思います。今からそのお話をしていただけると思います。 ◎講演4:ヒルキー・ゼイルストラ「オランダの建築保存教育」 京都工芸繊維大学様にはこのシンポジウムにお招きいただいたことをとても感謝してお ります。私はデルフト工科大学のRMIT プログラムの教育面について、お話ししたいと思

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-99- います。 写真 38 が学生の学び舎です。教授室は この後ろのほうにあります。学科組織につ いては少々触れるのみとし、主に教育につ いてお話しさせていただきます。研究につ いてはすでに午前中にマリー・テレーズの ほ う か ら お 聞 き に な っ た 通 り で す が 、 RMIT では、リデザインということについ ての教育と研究を行っています。それはつ まり、既にある建物を再生する、というこ とです。私たちは主に文化遺産を扱ってい ますが、それは常に建物とか建設技術とか いうだけでなく、その背景にある文脈の中において考えています。そして再生には、 Modification 、 Intervention 、 Transformation と い う 三 つ の 技 術 段 階 が あ り ま す 。 Modification は技術やディティールに関わる話で、Intervention はより建築的なことある いは建設技術の問題となり、そしてTransformation の段階になりますとより一層、文脈や 都市構造の中で捉えます。 ではまず学科組織についてお話ししまし ょう。RMIT には 25 名のスタッフがおりま す。そのほとんどは非常勤ですが、うち 3 名がフルタイムの教授で、3 名のフルタイム の准教授です。マリー・テレーズが研究担当 で、私は教育担当の准教授です。 次に教育についてご紹介します。オランダ の大きさについて日本と比べてみましょう。 オランダには14 の大学があり、1660 万人の 人口が、約41,500 平方キロメートルの国土 に住んでいます。つまり人口密度は日本とほぼ同じですが、全体的にずっと小さいわけで す。デルフト、アイントホーフェン、トゥヴェンテという三つの工科大学があり、建築と して独立した学部を持っているのは、デルフトとアイントホーフェンのみです。 デルフト工科大学には 17,000 人の学生がおり、建築学部には 3,600 名の学生がいます。 60%が修士課程で、40%が学部教育プログラムです。大学全体には 8 つの学部があります。 写真 39 はデルフト工科大学のキャンパスです。写真の下の方に写っているのが、1969 年から2008 年まで建築学部が使っていた建物です。その後、2008 年の 9 月 1 日に、私た ちは写真上方、つまりキャンパス北方の、元々は大学事務棟だった建物に引っ越しました。 理由は、火事です。ファン・デン・ブローク・アンド・バケマ(van den Broek and Bakema)

<写真 37>ヒルキー・ゼイルストラ

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-100- のデザインによる元建築学部の建物は、2008 年 5 月 13 日の火事で全焼してしまいました。 それで私達はこの建物に引っ越したわけで すが、これは既存建物利用の素晴らしい例に なったと思います。 私達は既存建物の中庭に、大きなガラスの 建物(Green House)を二つ増築しました。 一つは模型製作や非公式なミーティングを 行うためのもので、たくさんの講義室や学生 が作業をするためのスタジオもあります。右 下の写真は図書室で、すべての本がこの建物 へ引っ越して来ました。 図10 は私達の教育カリキュラムです。3 年間の学部課程(Bachelor of Science)2年間 の修士課程(Master of Science)からなり、1 学年は 2 セメスター(4 クオーター)に分か れています。青で示されている第5 段階は副専攻(Minor)に当てられる期間で、学内の他 の学部あるいはヨーロッパ内の別の大学で学ぶことになっています。 建築学部は 4 つの学科に分かれており、建築、都市計画、不動産・住宅、そして建築工 学となっています。そしてRMIT は、Master of Science 教育プログラムの一環として、建 築学の修士課程を提供しています。 教育プログラムの中で重視しているトピックスはいくつかありまして、それはサスティ ナビリティ、既存建物の再利用、専門性の確立およびそれを教える手法、あるいは実務家 として既存建物の価値に気づきそれを正しく鑑定評価するための手法や態度、などを教え ます。そして私達の学科では研究と教育の関連づけを大変重視しております。つまりデザ インを研究する、研究に基づいてデザインする、といったことです。 <写真 39>デルフト工科大学のキャンパス <図 10>RMIT 教育プログラム

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図11 は、私達の教育プログラムの全体像を見通しやすくするために作成した方法論(ス キーム)です。学部プログラムの初期段階ではあまり特色はありませんのであまり詳しく 申し上げません。しかし学部後半のマイナーの部分と修士課程の段階について、少しお話 ししたいと思います。

午前中にお聞きになった研究プログラムにおいては「Design and History」という表現が 使われていたことをご記憶でしょうか。これが教育プログラムになりますと、「Design with History」となります。 すべてのプログラムは年に 2 回ずつ提供されるため、学生がプログラムを始める機会も 年に2 回あることになります。そして秋学期には 100 名の学部生と 100 名の修士課程大学 院生、春学期には75 名の学部生と 125 名の学部生、合計で常に 200 名の学生が在籍してい ることになります。 私達が学生に与えるデザインプロジェクトは、現実に即し、研究に基づいており、そし て実務と関係したものです。そして、教員、建物のオーナー、地方自治体の担当者等にも 積極的に関わっていただき、この仕事に対するアプローチのしかたを学生に学ばせるので す。 いくつかのプロジェクトを簡単に紹介しましょう。リートフェルトが設計したデ・プル ーフ(De Ploeg)の工場、ロッテルダムの企業、デルフト工科大学で以前使っていた建物、 など。またロッテルダムやユトレヒトを始めとするオランダの都市やヨーロッパ各地にお ける住宅地のプロジェクトも行いました。今準備しているのは、ビークザンフの邸宅のよ り保存プロジェクトで、これはより保存維持に重点をおいています。そしてエンカの工場、 デンハーグの港エリアへの介入といったより都市スケールのプロジェクトもあります。他 <図 11>RMIT 教育プログラムのスキーム

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-102- にも、アーンハム、デンハーグ、ロッテルダムでプロジェクトがあります。医療センター や教育施設などです。 これらのプロジェクトは常に、私達の教育プログラムの枠組みに沿って行われています。 プロジェクトにおいては、二人のチューターが学生達を指導するのですが、主となるチュ ーターと、もう一人のチューターは建築技術の専門家にお願いすることが多いです。全て のプロジェクトには教授陣によって講評(review)され、学内や学外の専門家にも講評し ていただきます。 図12 の文字は小さすぎて皆さんお読みになれないでしょうが、それで結構です。ここに は私達が提供しているすべての科目(courses)が書きこまれています。これらの科目は、 講義、演習、そしてデザインプロジェクトから構成されています。 マイナープログラムの例もご紹介しましょう。例えば、歴史と都市計画(urbanism)に 関してRMIT で用意したプログラム。ここでは学生は都市の分析の仕方を教わり、自分の 出発点(position)を決め、そしてそこから建物とランドスケープのデザインを始めるので す。このプログラムや科目は、学外の学生でも履修することができます。 このプログラムを構成している科目別に見てみましょう。2 つのデザインプロジェクトと、 いくつかの講義、演習科目から成っています。昨年はライデン市でプロジェクトを行いま した。こ図13 は学生によるライデン市中心部の北のほうで、ランドスケープデザインを行 ったものです。 <図 12>RMIT が提供する科目

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-103- 学士課程の最後のセメスターには 卒業設計スタジオがあり、ここでは 学部レベルでこれまで学んできたこ とを総合的なスキームとして活かす ことになります。 卒業設計スタジオでは、不動産お よび住宅、都市デザイン、建築とい った各分野にデザインプロジェクト が用意されています。学生は、その プロジェクトやその設計の過程(プ ロセス)について述べた卒業論文も 書かなければなりません。 卒業設計スタジオのレベルもやはり、講義、演習、デザインプロジェクトの科目で構成 されています。 ロッテルダムのカトンフェンという大きな綿の倉庫での例を紹介します。こちらの倉庫 は今ではその一部が(ファン・リースハウト?)という芸術家の作品制作などに使われて いるだけです。保存状態がとても悪く、コンクリートの構造物をどうやって維持保存とい うことが一番の課題です。ある学生はこの建物について調査し、この場所にこのアーティ ストの展示館とアトリエを設計しました(図14)。 そして建築は非常に大切な要素 ですので、実務建築家、たとえば 本学元教授でRMIT の名づけ親で もあるヨー・クーネン氏などを講 師として招聘し、レクチャー・シ リーズを行ったりしています。 では次に修士課程のプログラム をご紹介しましょう。一学年目は 半年ごとに別れており、前半の第1 コースではより基礎的・理論的勉 強が中心であまり演習は無く、後 半の第 2 コースでは、演習と分析 や評価を文章にする技術などを学 びます。いずれにおいてもデザインプロジェクトを履修することができます。 この修士課程第 1 コースでは、既存建物を分析し、その一部を改修する設計をしなけれ ばなりません。その際には、サスティナビリティや省エネにも配慮し、建物のファサード もデザインし、施工技術や仕上げにも考慮しなければなりません。そしてそのプロジェク <図 13>ランドスケープの学生作品例 <図 14>倉庫を活用した学生作品

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-104- トについて、架空の雑誌に記事を書いてみるのです。 午前中にマリー・テレーズがご紹介したゾンネストラールの建物も、このようなケース スタディの課題の一つです。学生が終えたばかりのプロジェクトで、ベルへイクにある、 リートフェルトが設計したデ・プルーフの工場です(写真40)。 これはテキスタイルの工場でした が、会社がスカンジナビアのどこかの 国に移転したとかで売却されて、今は 空き家になっています。たまに展示会 等で利用されることもありますが、い わば、新しいユーザーとその利用を待 っている、といった状態です。 それで私達はまず学生を集めてレ クチャーシリーズを開催したのです が、講師は、リートフェルトやこの建 物についてよく知っている人々、この 町のコンテクストをしっている市役所の人、現在のオーナーなどでした。 学生がすぐにプロジェクトの分析に取り掛かれるよう、必要な図面や資料はなるべく私 達が集めておいてあげるようにしています。特に修士課程の 1 年生は、調べ物をする時間 が殆どありませんから。でも自分たちで資料を探すことも大変重要で、特にこの建物の建 設中の写真などはとても役に立ちます。 オリジナルの設計図面も勿論必要ですし、学生に図書館のアーカイブ室までそのような 図面を探しに行かせることもあります。学生はまず敷地分析をするのですが、その結果、 この工場の建物が町の中でいかに大きいスケールであるかがわかります。 また別の段階では建物そのものを、 構造、空間、素材といった側面から分 析します。そして詳細分析の段階へと 進み、学生はその建物がどのようにし て建てられているのかを知ります。改 修設計案・再利用案ができあがります と、学生はこのような模型や図面を使 って提案をプレゼンすることになり ます。 中には、他の者よりさらに一歩進む学 生もおりまして、図15 の作品では建 物に介入して室内プールと、追加のヴォールト屋根まで提案されております。 私達が扱うのは近代建築だけではありません。特に修士課程の 1 年次には保存維持的な <写真 40>デ・プリーフの工場跡 <図 15>学生作品例

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-105- プロジェクトを行います。例えば図 16 はデルフト工科大学が以前に使ってい た建物ですが、現在は空き家になってい ます。これをホテル、ゲスト講師や学生 のための貸室や会議スペース等に転用 するという案です。 その修士課程一年次後半のプログラ ムに移行すると、いくつかの講義と演習、 ひとつのプロジェクトになっています。 写真41 は修士課程の第 2 コースの実 習のひとつです。リートフェルトの建物 について分析しています。アムステルダ ムのリートフェルト・アカデミーの協力 を得て、そこの学生さん達と一緒に行っ たプロジェクトです。とても素晴らしい プロジェクトでした。 共同プロジェクトには30 人の学生が 参加しましたが、最初の4 週間をかけて 分析した内容を、たった1 分間の映像で プレゼンテーションしなければなりません。すごく密度を濃くしないといけません。そし て8 週目までに 1:50 のとても大きな模型を完成させます。アカデミーの学生の参加はこ こで終わり、デルフトの学生達は1:100 模型、1:5 の詳細模型へと進み、20 週目に全て を含めたプレゼンテーションを行いました。 写真42 はリートフェルト・アカデミーの外観です。午前中にプルードン先生もおっしゃ ったように、この手の建築物のカーテンウォールは非常に危険な状態ですから、建物を維 持するためにもサスティナビリティを 向上させるためにも、取り替えなければ なりません。カーテンウォールは一重ガ ラスのものと二重ガラスのものがあり ますが、この建物の場合は改修後もなお 一重ガラスのままなのです。オランダは 雪が降るような気候で、とても寒いので すが。 これから自分たちが改修案を設計し ようとしている建物の中で学べたとい うことは、大変素晴らしい機会でした。 <図 16>学生作品例 <写真 41>実習風景(リートフェルト・アカデミー) <写真 42>リートフェルト・アカデミーの外観

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-106- 学生は何度もプレゼンをしなければならないのですが、この20 週間のプログラムの中に は、4 回もプレゼンテーションの機会があるわけです。写真 43 は学生の模型の一例ですが、 リートフェルトの既存建物の上にコンクリートの建物を増築しています。 教育プログラムの最終段階には、「卒業ス タジオ」または「卒業ラボ」において、卒業 設計が行われます。この段階になるとデザイ ンと研究が融合します。学生はプロジェクト の設計プロセスを、自らの反省や他者からの 講評も含め、論文にまとめなければなりませ ん。この段階では、学生は社会に出た後の実 務に備えなければなりません。と同時に、建 築家となる自分を突き動かす動機といった ものも見定めなければなりません。それは学 生一人ひとりによって異なりますが、特に今 は建築家の就職が非常に厳しい時代で、卒業したからと入って職があるわけではありませ んので、自分が建築の何にどう魅力を感じているのかを確認しておくことは大変重要です。 私達はまた、再生デザインというのは一直線なプロセスではないことを学生に理解させ ようとしています。私達が扱っているようなデザインプロジェクトにおいては、分析、評 価、立ち位置決め等を含むこのような循環プロセスを何度も回らなければならないのです。 この段階では講義科目はポール・ミュルス教授の「文化遺産の開発」という科目だけで、 あとは全て卒業設計の研究部分に直接つながるような演習ばかりになります。 これはある学生の卒業研究を紹介します(図17)。ゼフェナールというとても小さな村を 扱いました。ここには大きな煙草工場があり、アメリカから葉を輸入して煙草を生産して いましたが、多くの人が禁煙したため、今は廃業して空き家となっています。そこで村役 場をこの建物に入れようという話になりました。 工場の近くには、お城のような建物があります。これはゼフェナール旧市街地の邸宅の 一つです。この「お城」の周りはどんどん工場に埋め尽くされて行きました。この邸宅の オーナーは86 歳で、どうしたらこの邸宅を安全に維持できるのかわからない状態でした。 そこである学生が、煙草工場の再生デザインを課題に選びました。彼はいろいろなトピ ックについて調査をし、立ち位置を決め、そしてデザインを決めていきました。彼はまず コンテクストを調査したのですが、煙草工場と邸宅の敷地が、この村の中で大きな面積を 占めていることがわかりました。 「お城」の部分についても調査をしました。煙草工場のほうは、20 年の間に面積がさら に大きくなっていました。そこでこの学生は塔のあるほうの建物ではなく、より大きな工 場の建物のほうを利用して、再生デザインを行いました。そして塔のほうは、ゼフェナー ル博物館の展示や、レストランや、村役場の一部として使うようにしました。 <写真 43>学生模型例

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-107- 私達のプログラムの、来年に向けての改善案もいろいろあります。まずチューター制度 が今は少し自由すぎるので、もう少し枠組みを決めたいと思います。また教授の数を増や し、教授による講評の機会を増やしたいし、内部外部の専門家がもっと設計演習に関われ るようにしたいと考えています。 私達の教育プログラムを紹介させていただき、有難うございました。京都工芸繊維大学 でも、将来的にはRMIT のようなプログラムが出来るかもしれませんね。 ◎討論:テオドール・H・M・プルードン、マリー=テレーズ・ファン・トール、ヒルキー・ゼイ ルストラ、後藤治、司会:中川理 ・中川理 それでは、保存に関する教育プログラム、 特に大学での教育プログラムについて少し議 論をしていきたいと思います。最初に、京都 工芸繊維大学の取組みについても、少し紹介 しておく必要があるでしょう。今映している のは、Web 上で自分たちの取組みを紹介した ものです。色々なものがありますが、これは 学生が自由に投稿して自分たちが行っている 実習について書き込みができるシステムにな っています(平成 21 年度事業報告書「建築 リソース活用教育 Web を利用した情報発信システムの構築」)。なぜこういうものを作った かといいますと、日本にはまだ建築の保存や再生について体系化された教育プログラムが ないので、試行錯誤でやっていくしか仕方がない状況ですので、実際に現場を体験しても らうというフィールド実習が重要となってくるからです。保存については、先ほど“ステ <写真 44>討論の様子 <図 17>学生卒業研究例(ゼフェナール)

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